昨夜はNHK総合の「映像の世紀バタフライ・エフェクト [新]『モハメド・アリ 勇気の連鎖』」を見る。モハメド・アリの名は知っていてもその人がどんな素晴らしい行動をとったのかはこの番組で知った。番組HPによると「1954年、12歳だったアリが愛用の自転車を盗まれたことがすべての始まりだった。怒りに燃えたアリはボクサーを志し、無敵のチャンピオンとなる。その言動は、世界を大きく揺さぶった。ベトナム反戦運動を燃え上がらせ、オリンピックを揺るがす表彰台での黒人差別への抗議をもたらし、史上初の黒人大統領誕生へとつながる。世界を敵に回しても信念を貫いたアリの勇気は、世界を変えたのだ。貴重映像でたどる勇気の連鎖の物語」とある。
放送中に流れた2つのキーワード、「バタフライ・エフェクト」と”Impossible Nothing”はこの番組を物語る。少年だったクレイの名は奴隷の名前、のちに最高の名であるモハメド・アリと改名する。ボクサーとしてチャンピオンに輝くもベトナム戦争への徴兵が始まる。これを拒んだためアリのチャンピオンは剥奪される。アリは全国民を敵に回すことになるが全米の大学で講演し、ベトナム反戦運動を繰り広げる。戦争は人を殺せ、殺せ、殺せ、だと演説するとこれを聞いた多くの若者は徴兵カードを焼き捨てた。これによりアメリカの戦争支持率は60%から30%に割り込み、その時、はじめてアメリカは戦争に負けた。
当時、これを見ていた人の中にオリンピック選手たちと後に大統領となるオバマがいた。黒人のオリンピック選手であるスミスとカーロスの2人はメキシコシティでのオリンピックで1位と3位に入った。2位はオーストラリアの選手。スミスとカーロスは2つのグローブをわけあって表彰台で拳を天に突き付けた。これは黒人差別を著す行為だそうだ。2位の選手もこの考えに同意して人権プロジェクトのバッジをつけて表彰台に上がった。オーストラリアもアボリジニの問題を抱えている。その後、この3人はそれぞれ様々な迫害を受けた。
アリは禁固7年の罪を終えてボクシング界に復帰。ブランクのあったアリは8ラウンドノックアウト勝ちを収める。アリの言葉に”Impossible Nothing”がある。「不可能など何もない」だ。この試合をハワイで見ていた13歳の少年がいた。後にアメリカ大統領となるオバマだった。少年は逆境をはねのけるアリを尊敬した。オバマもまた黒人の血を引いて育ちアイデンティティのない少年時代を送っていた。「すべての国民は生まれながらにして平等である。それが真のアメリカだ」と唱えて政治家を志す。
政治家になる前のオバマは執務室にアリが闘う写真を掲げていた。オバマもアリが言うように「不可能なことなど何もない」と話す。大統領になるとアリからもらったというボクシングのグローブをホワイトハウスのダイニングルームに飾った。その部屋をオバマ自身がメディアに開放している。オバマは「努力を続けて信念を貫けば、なんだってできるのです」という。
オバマが大統領になった後の2016年、あの2人の陸上選手がホワイトハウスに招待された。2人は48年の時を経て名誉を回復し、その行為を称えられた。が、オーストラリアの選手にそれはなく名誉の回復のないままに68年の生涯を閉じた。スミスとカーロスはアメリカから葬儀に駆け付けて彼の棺を担いだ。母校の大学には2人の勇気ある行動を称える碑が建てられている。そして迎えた昨年の東京オリンピックでは選手たちの抗議行動が許されるようになった。
アリは2016年に亡くなる。葬儀の日、娘は弔辞で述べる。”Fly butterfly(蝶よ飛べ)”、”Fly butterfly”と。アリは生前、「蝶のように舞い、蜂のように刺す」を好んだ。そしてアリの人生の始まりともいえる自転車紛失事件がある。今、アリの母校には自転車のモニュメントが飾られている。
先ほどまでNHKプラスでこの番組を再度見る。いい番組だった。世界を見渡すと今も銃声は鳴りやまない。
ともあれ今日も元気で楽しく過ごしましょう!
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