2017年11月4日土曜日

「知らないことを知る喜び」

 NHKの「らららクラッシック」でドヴォルザークのチェロ協奏曲が流れる。チェロ奏者の長谷川陽子の曲の解説がある。チェロ演奏のなかでは難しい曲だそうだ。ともあれ、この題名を忘れまいとブログにアップする。

 昨日は他にもいい番組があった。高知県の四万十川近くで鍛冶屋職人を目指す関東から来た若者がいる。年収1000万円の技術者から転身して初めて作った一丁の斧。自ら作った斧を5000円で地元の人が購入する。チップとして1000円上積みされた。ひと月の生活費にするにはかなりの数を作って売らねばならない。鍛冶屋の親父さんは初めての弟子を前にして悪戦苦闘して教え込む。しかし、実の息子3人は誰も鍛冶屋を継いでいない。

 次に見たのは「人生レシピ」。新聞の番組欄でフランス語を学ぶために大学院入学や藝大に入学の記事を見る。知り合いに英検1級で大学に入り直し、大学院でフランス語を専攻した人がいる。もしかしてその人?と思ってネットで先に検索すると年齢が違っていた。それでも興味を持って番組を見る。

 尾崎という女性は63歳。岡山大学大学院受験までの4か月間、猛勉強をする。43歳で合格。4年後に大学院卒業。受験前、四国の香川県からわざわざ岡山の大学まで出向いて教師に直接会っている。また1時間半かけて通学したそうだ。「学び直しとは?」と聞かれて「自分の世界が広がる。知らなかった世界がわかる」と話す。

 もう一人の藝大入学の女性は55歳。元地方のアナウンサーで作家やライターをしている。小さい頃から憧れた音楽への夢。若い頃音大に入ると親に話すと拒否されて語学の大学に進む。それでも常に音楽の世界に触れていた。プロとかアマとか関係ない。ちゃんと勉強したいとの思いが昂じて藝大受験3度目で見事合格。46歳だった。その人にとっての「学び直しは?」と聞かれて「新しい世界が広がって新しい人生が始まった」という。

 他にもゲスト出演の伊藤麻衣子は現在早稲田大学博士課程で学んでいる。45歳で大学入学だとか。伊藤は言う。「乗り越えた時の達成感はたまらない」。
 
 この人たちを見ていて思った。同じくこの人たちよりも10歳くらい歳を取ってから再度大学生になった。若い頃に公立大学受験に失敗し、私立の短大に入った。当時は誰もが大学に行く時代ではない。短大で学ぶだけでもありがたいコト。しかし、卒業後社会で働き始め、しばらくするとこれではいけない、との気持ちが芽生える。その当時は働くことが優先し、勤務後は好きな習い事をやっていた。

 それでも満足感は得られない。日々流されていく毎日。時は過ぎて、街中でばったり出会った高校時代の同級生の言葉にハッとさせられる。その人は音楽大学でピアノを学んだ人。その人との立ち話での一言でこれまでとは全く異なることに方向転換を図る。まずは語学、36歳の時だった。中国語の世界。これまでとは全く異なる人たちの集まりだった。職業もバラバラでかなりの刺激を受ける。

 外国、へ行くという発想もその時まではなかった。しかし、習い始めて4年後、初めて中国へ出かけて自分の知らない世界を知った。これが病みつきとなり、いろんな語学に手を出す。当時、広島はアジア大会目前の時期。いろんな外国語講座を学べた。講座でいろんな人たちと知り合う。楽しかった。しかし、どんな時でも中国語は学び続けた。

 これが昂じて会社リストラをきっかけに働くという選択肢はなく、再度大学へ行こうと思った。リストラされて2週間後、大学募集のパンフを目にする。この時、神様はこの世にいらっしゃると実感する。

 願いは叶うモノだ。無事大学合格をネットで見たときは本当に嬉しかった。ところが入学して丸1年後の2年生になるとき、母が大腿骨骨折で入院する。その後の5年間は地獄の日々だった。親の入院で4か月間付き添い、病院に寝泊まりして大学に通った。2年生は教養課程であり、毎日何時間も出席せねばならない。ましてや病院内では勉強できない。時間を見つけては自転車で我が家に帰って勉強し、夜は病院で寝る。これが4か月続いた。それでも病気することもなく張り切って大学生活を過ごした。今、思ってもどこからこのエネルギーが出ていたのだろう、と不思議である。

 昨夜のテレビを見ていてどの人もそれぞれ異なる厳しい環境の中で学んでいる。今は何だってできる環境にいる。それなのに…。昨日のテレビで気合を入れなおそうと思いつく。

 

 自分にとっての「学び直し?」と問われればこの3人と共通する。交流する人々の世界が広まったことは大きい。これまで知り合えなかった人々と知り合う機会が増えた。他にも年齢は関係ない、何だってやれる、との思いが強くなった。これは自分にとって大切なことである。さらには「知らないことを知る喜び」を知ったことが大学で学び直したことの一番よかったことかもしれない。

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