2020年5月25日月曜日

桑原隲蔵(じつぞう)

 先日の『項羽と劉邦』(中)に井上靖が書いている桑原隲蔵(じつぞう)はブログに取り上げた。だが、司馬遼太郎の桑原の詳細は取り上げていない。司馬遼太郎は『項羽と劉邦』(上・中・下)3巻のどこかに桑原隲蔵の中国における人肉の風を書いている。これは本を読んだので確かだ。だが、何巻の何頁に書いてあるのか付箋を貼らずにいたためはっきりしない。それを確認すべく『項羽と劉邦』3巻から「桑原隲蔵」を探し始める。文庫本であっても1巻が350頁近くある。それを「桑原、桑原、……」、と目で追っていく。一昨日は探せずじまい。昨日もまた探すと下巻に掲載があった。これで一安心。

 下巻はまだブログにアップしていない。アップしていなくても付箋を貼っていなかったので探し出して幸いだ。その個所を記そう。

 ★彭越には後日の運命がある。かれは高祖(劉邦)によって梁王になったが、高祖の妻呂公(りょこう)に嫌われ、謀反のうたがいをうけて誅殺された。その肉は塩漬けにされ、ハムのように切りきざまれて、諸侯に洩れなく贈られた。憎しみを共にせよ、という寓意であったが、この塩漬けとそれを啖(くら)うという形式にはこの大陸に食人の習俗があったことを想像させる。大正十三年、桑原隲蔵博士が史学上の立場からこの大陸における食人習俗(カニバリズム)を論考しているが、いずれにせよ彭越の場合、その末路は食われてしまう。この滑稽とも悲痛とも言いようのない終局によって、かれの人間と人生そのものが痛烈な演劇にされてしまった。(『項羽と劉邦』下巻151-152p)

 人の作品を取り上げたり引用するにはいい加減ではいけない。桑原隲蔵は忘れられない人になった。桑原、と電子辞書で調べるとその子息は桑原武夫だった。

 ともあれ今日も元気で楽しく過ごしましょう!

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