『昭和とわたし』、サブタイトルとして「澤地久枝のこころ旅」(文藝春秋、2019年)を読んだ。澤地久枝のこれまでの著作を編集者が1冊の本にしている。この本を読む途中で中村哲氏の訃報を聞いた。著者はこの本で中村哲氏について書いている。中村哲氏の講演はだいぶ前に広島で聞いたことがある。ペシャワール会主催の講演でアフガンに井戸を掘る話。だが、その内容はあまり覚えていない。
ともあれ今日も元気で楽しく過ごしましょう!
以下は気になる箇所をメモしたもの。
★「歴史の裏糸として生きた人びとに思う」
普通の人が実は大変に大きな歴史の裏糸のところでしっかりと生きているんです。その人たちは、自分から「私はこれだけのことをしました」などと言わないです。皆、黙ってます。その人たちがいなかったら、人間の歴史はないと、私は思います。
中村哲・(聞き手)澤地久枝『人は愛するに足り、信心は信ずるに足る――アフガンとの約束』(23p)
★「巨きな人、中村哲」
どん底の人たちとの密接なふれあい、多くのボランティアや働き手と生活をともにして中村医師は無類の「人間好き」なったと思われる。「人は愛すべきものであり
、真心は信頼するに足る」という一つの結論を胸に、医師は今日もアフガンの空の下、水路の完成に全力をあげている。……中村医師は、若い人に希望を見出している。
……練馬の会での質疑のとき、「なぜいまの仕事に?」と青年に問われ、すこし考えてから、「やはり、運命、さだめのようなものを感じます」と医師は答えた 多くの人との縁が、かねてから約束されていたかのように、中村医師を人生の各章へいざない、支え、生きのびさせてきた。恵まれた人生と中村医師は言う。苦労をみせぬごく自然体の人に、、私は「巨きな人」を見た。中村哲・(聞き手)澤地久枝『人は愛するに足り、信心は信ずるに足る――アフガンとの約束』(159p)
、
★とりわけ悩み多かったあるとき、正宗白鳥氏が色紙に書かれた文章に救われる思いがした。
この故に明日のことを思ひ煩ふな、明日はみずから思ひ煩はん
一日の苦労は一日にて足れり
『ひたむきに生きる』(205p)
★「リンドバーグ夫人の知恵」
リンドバーグ夫人の『海からの贈り物』には、おんなに課せられている役割や家事の、息苦しいような煩雑さの描写のあとに、おのれを見失わないためには、「生活を簡易にして、気を散らすことの幾つかを切り捨てること」と書かれている。また、「女の飢えが満たされるにはどうすればよいか」という問いに、「一人になること」と浜辺の貝に答えさせている。『手のなかの暦』(206p)
★「一人暮らしの赤信号」
好奇心が薄れ、外出したり人に会うことがいやになってきたら、一人暮らしに赤信号がともったと警戒しようと思っている。友人たちとのにぎやかで刺戟的な交歓のあと、一人きりになっての深夜の静寂に、わたしの心も脳もリフレッシュされ再生してゆくのを感じる。寂しさに縁はない(あれ、ちょっとヤセガマン!と思いますか?)。生きている実感を溢れさせて一人で暮らす。これがわたしの人生。『心の海へ』(208-209)
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