一年間にどのくらいコンサートや美術館に出かけるのだろう。コンサートは広響定演だけで年に10回ある。これに平和コンサートなど入れると広響だけで年に11,2回聞いている。これに他の気に入った演奏会を加えると20回くらいになるだろうか。もしかしてそれより多いかもしれない。音楽は小さい頃から好きだった。そのため聞きに行くことに対して何の違和感もない。ところが美術に関してはとっつき始めはかなりの無理があった。苦手意識が強いモノは無理してその環境に身を置かねばならない。そう思い始めてまず飛び込んだのは県立美術館友の会への入会。金銭を払っていればその元を取ろうとする貧乏根性が出る。そのこともあって美術館へ出かけるようになった。他にも友の会主催の美術講演会があると知れば好き嫌いの有無は別にして聞いている。
運動もそうだ。子どものころから大人になるまで自転車、水泳など、人ができることができなかった。これじゃ、何を楽しみにして生きているのかわからない。そう思ってまずは自転車に挑戦。これは思い立ってから10年(?)経過してやっと36歳で乗れるようになった。こうやってできないことや知らないことがわかるようになるとさらにどん欲になる。ついには県外の博物館の友の会にも入ったりした。今は県外は脱会している。しかし、その後も旅気分で県外まで出かけて音楽や美術を楽しむ。その一つに2015年春に出かけた兵庫の美術館の堀文子展がある。
先日『ひまわりは枯れてこそ実を結ぶ』(堀文子)(堀文子 小学館、2017年)を読んだ。2015年春といえば日本画を習い始めて一年半後のことだ。自分で「これっ」と思うものにぶつかればかなりのぼせるタイプ。堀文子の展覧会と知って「おとなび」を利用して「行こう」と思った。昨日、楽譜を整理していて保存していた堀文子の展覧会ポスターを目にする。堀文子、やっぱり生き方が素晴らしい!
以下は『ひまわりは枯れてこそ実を結ぶ』からの抜粋。このなかの「死ぬと、私の生命は何かになると考えています。できれば私は木になりたいと思います。この世の生命体の中で一番厳粛で立派なのは、木と植物だと考えておりますから」。これは特にいい。これに影響されたのかそれともその思いが自分にもあるのか日本画で描くのは木や植物が多い。その他、ここに羅列したのはどれもいい。ともあれ今日も元気で楽しく過ごしましょう!
★ 老残の醜さを見せずに
地に帰る
落葉の素晴らしさは、
年と共に私の心をゆさぶるのだ。
秋の落葉の美しさには
命の終わりの静けさがある。9p
★ 生涯を共にした気難しい日本画は私に雑念を抑え、考える事を教え、抑制と静謐な美を気付かせた。そして無私と集中を叩き込んでくれたのも、古風な日本画であった。38p
★ 死ぬと、私の生命は何かになると考えています。できれば私は木になりたいと思います。この世の生命体の中で一番厳粛で立派なのは、木と植物だと考えておりますから。78p
★ 行く先の決まった立派な道を剃れて、草木の茂るひなびた道を私はいつも好んで歩いていた。人里離れた道で出会った花や鳥や雪や霧がどれほど美しく私の心に残ったことか。淋しさや孤独は絵描きの目を美しいものに向けてくれる。80p
★ 私に必要なのは、ますます深まる生命の不思議を見つめる感性を研ぎ、日々の衰えを食い止めることなのだ。残り少なくなった私の日々は驚くこと、感動すること、只それだけが必要で、知識はいらない。89p
★ 息の絶えるまで感動していたい。96p
★ 体内に生命力が溢れる若いうちは自己主張に明け暮れ、自然に目を向ける余裕はない。年を重ね、若さにかげりの出始めた時、人は初めて周囲の自然に気付き、草木の生命が見えてくる。そして自然に寄りすがり、その力を借りなければ立ち行かなくなる日がやって来る。海へ、山へ、異国へと居を移したのは、そんな本能の促しもあったようだ。107p
★ 旅での感動は私の眠っていた脳細胞に新しい回路を復活させてくれるのです。112p
★ 私は、私の好きなように生きている。誰でもない私でありたかった。だって一回しか生きられないんだから。117p
★ 慣れない、
群れない、
頼らない。122p
★ 人間は結局一人なのです。友人は素晴らしいものですが、自分の人生は自分で決めるという孤独と向き合わなくてはいけないものだと思います。124p
★ 好きな事を追い、嫌いな事を寄せつけない毎日をやっと手に入れた今の自分が面白くてならない。好きと嫌いを堂々と人前にさらす勇気を手に入れるまで、なんと長い年月がかかったか。それを見詰めるまで長らえた吾が命も捨てたものではないと思っている。125p
★ ひとりがいいです。歳をとっても不便でも、親を背負って飛んでいるスズメなんて見たことありますか。生物はその時が来れば黙って去っていく。私もいずれ、その時を、初体験するのだと覚悟しております。137p
★ 年を経るごとにわからないことが増えていきます。それだけに生きているのが楽しい。知る喜びがたくさん残されているということですから。140p
★ ひとり身の自由を背負い、風狂の旅人となり老年を歩き続けている。142p
★ 美しいと思ったのに、自分が一度も描いていないのは虹です。最後に虹を描いて、「虹の橋を渡ってあの世に行きます」と言っております。165p
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