2017年6月25日日曜日

『日本で100年、生きてきて』

 図書館で予約する本の順番がなかなかやってこない。こうなると活字に餓えてくる。今朝の新聞で本離れが進み、月に1冊も読まない人が33%とある。スマホなどで雑誌や新聞、そして本も無料で読める。それにしてもひと月に読む冊数がゼロとは驚き。

 活字中毒とまではいかないが、なにも目にしないと飢えを感じる。図書館の書架を物色してとりあえず3冊借りる。その1冊はむのたけじの『日本で100年、生きてきて』(朝日新書、2015年)。この本は木瀬公二がむのたけじに聞き書きした本である。むのたけじは昨年、101歳で亡くなっている。本の裏表紙には「1945年8月15日、敗戦の日に新聞社を辞めて故郷横手(秋田県)で週刊新聞「たいまつ」を創刊した。嵐はたいまつを消すこともできるが、逆にたいまつが盛んに燃えるのも嵐の夜という。この国の深い矛盾を、ずっと見続けてきた100歳の現役記者が、これから生きる人たちへの熱い思いをこめた伝言である」と書いてある。

 この中にユダヤ人虐殺後のドイツについて書いている。これを知るために借りた本ではない。にもかかわらず、こういったことに目がつくのも何かのご縁と思って読む。

★ドイツ国民もヒトラーが出たとき歓迎した。国家社会主義ドイツ労働者党なんて左翼のふりしてくるんだな。ストライキがあると一番応援したのはナチスだった。だからユダヤ人を虐殺するとは思わなかったものな。わかったのは戦争終わってから。ドイツ国民は、これはナチスだけの問題でなく民族全体の問題だ、と受け止めて全国民で裁くことにした。そして、アンデスの山奥までナチスの残党を捕まえに行ったでしょ。ドイツを旅行すると、小さな広場に標柱があってね。「何年何月、ここに500人のユダヤ人が集められて、アウシュビッツに連れていかれたが、我々は止められなかった」と書いてある。二度とこんなことをしないぞという決意表明。そういう碑がちゃんと建っている。90p

★ナチスがやった大量虐殺をドイツ人全体の過ちだったととらえて、ユダヤ人の救済をした。日本は中国などに行って大勢の人を殺したが、ドイツのようにけじめをまだつけられていないでしょ。外国にいけばそういうものが見られるんです。そしていろいろと考えるのよ。そこから日中関係をどうするかと進んでいく。ぺこぺこするのではなく「一党独裁はおかしい」と思えば、それを言う関係にだ。外国旅行に行きなさい。何かをやろうと思うときに、もう遅いという年はないんだ。229p

★残虐行為をやったのは、善良な市民と言われていた人たちです。戦場に行けばそこに身を置く誰もが、相手を殺さなければ自分が殺されるという恐怖の前に、3日もいれば人格が狂ってしまうんです。日本に帰ればまた善良な市民。戦地でやってきたことはとてもじゃないけど口にできない。沈黙するしかないんですよ。とても娘や妹に聞かれて話せるもんじゃないんです。でも、それは事実がなかったということではありません。54p

★差別をする人間は、自分を粗末に扱っている人間だね。…自分を大事だと思う人は決して他人を差別しない。そうなるためには、一人ひとりが自立した生活の主人公になることですよ。ごく当たり前の、人間主義の生き方をするということです。それができれば、永遠の繁栄なんてことを求めなくなるでしょう。92p

★地球は小さなものが住むのに合うんだ。威張るもの、乱暴なものは嫌いなんだ。小さくて弱いもの、軽くて低いもの、少なくて細いものなどを大切にしなくちゃ。そうすれば人間優しくなるんじゃない。花が傷つけずに咲き合う「共生」という感覚も大切にして。106p

★人間というのは、苦労があっても大切にされているという基本がしっかりしていれば寂しさや不安はない。大切にするというのは相手をしっかり見てしっかり耳を傾けることです。166p

★マイナスは、プラスがあるから存在するということです。マイナスとプラスを切り離して考えてもだめなんだ。夜はだんだん暗くなっていくけど、もう一つ先をみれば次の朝に向かっている。そう考えないと。199p

★この年になって確信できたことは、人間は何のために生まれて何のために生きているか、ということへの答えだ。前も言ったけど「喜ぶため、楽しむため」だ。泣くためではなく、笑うため。222p

★楽しむというのは、一人ではしないな。一人で泣いても誰もおかしく言わないでしょ。…ところが一人でアハハと笑うと、あいつは馬鹿でねっかて言われる。つまり悲しみや嘆きは一人でやるが、楽しみ、喜びは複数の人間で味わうものだということだ。223p

★老いるということは経験を積むということ。忘れることはあるけど、オラは96歳の今が、頭の働きは最高だと自信をもって言える。これまで考えることができなかった問題も考えられるもの。若者も年寄りもなく、つながり合わないと。223-224p

★海外旅行というのは絶対必要だよ。どんどん行く方がいい。金があれば自分らで計画を立ててもいいけど、安い団体旅行だって行くべきだな。まずは相手と知り合わないと話は始まらないが、見てくるだけでも勉強になる。見れば考えるもの。いろいろ見ながら自分を見る、日本を見るということで、自分の人生の中身を確かめることだ。これは頑張ろう、これはまねをしようとな。227p

★生きていれば毎日、何かを経験するでしょ。ああだったとか、これは間違っていたとか何か考える。それが前進なんですよ。死ぬときが人間のてっぺんなの。1日生きることは1日新しい経験をする。出てきたのが悲しみであっても悪いことではない。悲しむことを知らない人が、喜びを知るわけがないもの。231p 

★私は50歳ぐらいから、自分を戒める言葉をこころに描いて文章を書いてきたの。…文章に限らず、行動の一つひとつを「私は」旅行に行きたくて「行った」のか、「行かされた」のかを確かめながらすすむことが大事なことなんだ、という戒めだ。主語を生きろ、だ。60歳代になって言い聞かせたのは「形容詞は書くな」。「寒かった」「暑かった」じゃなくて「気温が何度だった」と書けばいいじゃないか。主語を鍛えるためには、客観的データをしっかり把握することが重要なんだ。70歳になって「動詞を動かせ」ってね。雲の動きだって「流れた」「飛んだ」「溶けていった」と実際の動きが目に浮かんでくるじゃないの。平板な文章だと心に残らないもの。…そうやってきて、行きついた考えは「文章は面白くないとダメ」だ。231-233p

★心に決めていることは、自分が使った食器と下着の選択は死ぬ日まで自分でやること。これは50歳くらいから続けています。自分が汚した物、アカや汗は自分で始末する。人に迷惑をかけない。死ぬ前の日までパンツを洗うつもりです。236p

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