図書館で借りた『よみがえる力は、どこに』(城山三郎 新潮社、2012年)を読んだ。この本はタイトルだけみても元気が出てくる。いつものように気になるところを記そう。と、そのまえに、著者の城山と奥さんの馴れ初めを記したい。
ある日、奥さんとなる人は図書館へ行く。ところがあいにく閉館。立ち止まっていると城山が来館する。休館を知った2人は知り合いではない。だが、図書館を一緒に後にするうち、共にカフェに入る。そして映画を見て過ごす。城山は一緒にいる彼女を妖精と思うようになる。だが歩いているところを咎められ、交際中止に(当時はそうだったらしい)。あるとき偶然ある場所で遭遇。その結果はいい方に……。
まるで映画のような話。その奥さんを早くに亡くし、後に残った筆者が書き記したものがこの書。
★私は石田さんの伝記『「粗にして野だは卑ではない」石田禮助の生涯』を書こうと思い立ち、取材を始めました。例えば石田さんの下で副総裁を務めた磯崎叡さんは、「ずいぶん多数の人に仕えたけれど、あんなに気持のいい人はいなかった。毎朝、石田さんに会うのが楽しみだった」と言うのです。・・・これは石田さんの、年齢をジャスト・ア・ナンバーにした生き方の反映だと思います。常に昨日と違う顔を見せる、部下にとって刺激的な上司でありつづけたから、会うのが楽しみになるわけですね。(日々新面目)って言葉がありますが、石田さんこそまさにそういう男でした。毎日毎日を、新しく生きた。例えば、石田さんが好奇心が強い人だったということもある。好奇心は、さまざまなものを吸収して、日々を新しく、若々しく生きるためには不可欠ですね。何も知的好奇心だけでなく、映画を観に行くといった、ごく一般的な好奇心でもいいんです。(20-21p)
★印籠を見せて、威張るのは、肩書きや権威を笠に着ているからおもしろくない。石田さんにいわせると、黄門さまは副将軍かもしれないけれど、卑なんですね。座頭市はまさしく粗にして野だが、卑ではないんです。むろん、好奇心旺盛や権威嫌いなだけでなく、副総裁に向かって、「日常の仕事は、すべて君に任せる。君のいやな仕事は全部おれが引き受ける。」などとも言い、実際にそうしてみせる。これでは、部下の磯崎さんが心酔するのも当然でしょうね。(21p)
★私には、風呂につかっていた老人たちがみな、同じ顔に見えたのです。あれはあれで軟着陸しているのかもしれないけれど、自分だけの顔を得なくていいのかな、と感じます。あるいは、石田禮助さんを日々新面目だと言いましたが、そういう日々新たな、生き生きした顔を得なくていいのかな、と。老後であろうと、着陸を考えずに、なお飛び続けることはできないのかー私は居心地悪く浴槽に入りながら、そんな夢想をしたのです。人生は鐘と同じで、激しく叩かないと激しい音が鳴ってくれないのではないか。うつろに叩かないと、うつろな音が響くだけではないでしょうか。人生には、飛んだ人にしか聞こえない音色があるように思えるのです。(51-52p)
★『花伝書』の中で、私がいちばんピンと来た言葉は、「住する所なきを、先ず、花と知るべし」と言う定義でした。現状なり考え方に安住しない、あぐらをかいたり、けっして満足したりしない。日々を新しく生きる。心を常に新しくしておく。そんな心の赴くまま、知らない道へも踏み込んでみる。そういう姿勢にこそ、花があるのではないでしょうかー。(71-72p)
★人間が、齢をとっていようがいまいが、時代が大変であろうがなかろうが、何かしようとする時、自分の中の探検家を目覚めさせばならない。もっと言えば、常に自分の探検家を元気に、活発にさせておかないといけない。何かをやろうと思った時に、考え込んでいたらダメなんです。・・・自分がこれは「面白い」と思えば、それを信じて最後まで書いてしまうことです。これは小説だけの話ではないでしょう。……自分の中の探検家と共に、やりとげてしまえばいい。反省や後悔は後からしたっていいし、人並みの道は通らぬ梅見かなと嘯いてもいいし、どうせ一期は夢だと思えばいいし、担雪埋井と呟いてもいいんです。(74-75p)
この最後のフレーズはいい。「齢をとっていようがいまいが、時代が大変であろうがなかろうが、何かしようとする時、自分の中の探検家を目覚めさせばならない」、「何かをやろうと思った時に、考え込んでいたらダメなんです」。
若い頃は何かを始めようとするとき、考えて行動していた。これは何かをしようとする時の弊害になる。また考えて行動しても自分の描くように年を重ねていない。そのこともあってか、年齢を経るにつれて気の赴くままに行動するようになった。今はどこにも属さず、ただひとり。遠慮するモノ・コトはなく、また何の柵(しがらみ)もない。なんと気楽なことか。
筆者のように「日々新面目」を呈して過ごそう。今日の日々新たは人のツイッターで知った「反薄明光線」。
他にも日々新たにといえば、昨日ネットで『「定年留学」してみませんか?-60歳からのアクティブ・ライフのすゝめー』を見つけた。donky.la.coocan.jp/kouen/shimindaigaku_kouen.pdf(参照)
この本の著者が自費出版したものだろう。ネットでこの本を読むことは可能。しかし、紙の本と違ってパソコン上で読むのは大変。紙の本ならば短時間に読める。だがパソコン上では10頁も読むと飽きてくる。その内容に飽きるのではなく、読むのに飽きる。それでも興味を覚えたので毎日少しずつ読もう。なんとその人の留学先はスペイン。これに共感するのかもしれないが……。
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