2023年12月21日木曜日

「新・街道をゆく」肥薩のみちを見る

 NHKのBSで「新・街道をゆく」を見た。旅人は吉川晃司で肥薩のみちを旅する。NHKのBSの1と3が一つになって20日あまりになる。番組の編成はこれまでは再放送が大半だった。が、BS1に統合されても「新・街道をゆく」は続きそうで安心して見た。肥薩の薩摩は母たちと20年以上前の年末ごろに出かけた。肥後に至ってはもっと前になる。

 番組の中で胸をうたれた場面があった。それは「トランス・ネーション」である。豊臣秀吉の朝鮮征伐で強制的に連れてこられた腕のある陶工がいる。今その子孫は15代目の沈壽官さんだ。14代目の沈壽官は「肥薩のみち」にも出てくる著名な人だ。その子供の15代目がソウルで薩摩焼の源流である韓国の陶芸を学ぼうと、大学院留学を目指す。が、面接官から日本語で書いた願書について問い詰められ、留学を諦めるくだりがある。それは「400年間の日本の魂を捨てられるか」であった。15代目は司馬遼太郎に手紙を書いた。司馬から届いた返事には「いまの日本人に必要なのは、トランス・ネーションということです。韓国・中国人の心がわかる。同時に強く日本人である、ということです。」「真の愛国は、トランス・ネーションの中にうまれます」と。この「トランス・ネーション」は司馬の造語である。

 15代目は司馬からの手紙を大事に持っていた。そしてカメラはそれを写し出す。この場面の前に司馬が14代目と一緒に京都の祇園で遊んだ話題がある。そのとき14代目は関ヶ原の退却戦を伝えた「妙円寺参りの唄」を歌った。が、感極まって涙をこぼしながら歌った。その時、芸者は手を止めて歌に聞き入ったという。15代目はいつのまにか生まれたままの姿になっていたそうだ。この件も写真で写し出される。

 司馬作品に14代目をモデルにした『故郷忘れじがたく候』がある。年末年始、この本を読もう。肥薩へ行きたくなった。

 ともあれ今日も元気で楽しく過ごしましょう!

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