2022年2月23日水曜日

「ローマでの”大患”」から

 図書館に予約した「文藝春秋」新年号を読んだ。文春100周年の新年特別号とあってずっしりと重い。この中で興味を持って読んだのは塩野七生の「ローマでの”大患”」である。塩野は昨年の夏、家の絨毯に靴のかかとをひっかけて転倒し大腿骨を折ったそうだ。その際、法王御用達の病院に入院し、その様子を書いている。大腿骨骨折は徹子の部屋に出てくるある年齢以上の女優さんたちにも多い。88歳まで元気だった母もある朝、トイレに行こうとして転倒し大腿骨を骨折した。年老いて骨折するとそれがもとで命取りになるケースもある。

 イタリアは日本と同じく国民皆保険制度の機能があるとか。だが、法王御用達の病院は保険は適用されず費用はすべて先払いらしい。塩野は息子が生まれるとき以来、入院経験がなく今回が2度目だそうだ。1回目は医師の旦那が担当医であったが塩野に言わせると子の誕生は病気ではないとのこと。

 面白いと思ったのは「確信犯的にアンチ一神教の私がなぜ『法王たちの病院』とも呼ばれているジェメリッを選んだかだが、それには宗教的な理由は全くない」のこの「確信犯的にアンチ一神教」のくだりである。言われてみれば自分もその通りの確信犯的アンチ一神教だ。それなのに評判通りの機能ぶりの病院であることから入院したという。

 記事の中で何度か出てくるキーワードは夏目漱石の「修善寺の大患」である。この本を読んでいないので何とも言えないが塩野に言わせれば病院での対応をめぐって漱石ほどに名を揚げていないので入院はショックだったという。塩野は入院から退院までの総額は400万円かかったとか。漱石の件を塩野は次のように記す。「持って来てもらった本の中に夏目漱石の『修善寺の大患』があって、そこに漱石は次の一句を書いている。東京の本社にもどる朝日新聞社の社員の一人が、こう言い残して修善寺から発って行ったというのだ。『もっと居たいが忙しいから失礼します。その代わり手当は充分にするつもりであります』と」。

 ところが文春と新潮に記事を書いている塩野に対して二社は「大変でしたね、がんばってください、退院したら甘いものでも送ります」だけであったという。塩野は漱石との重要度の違いを「この程度」と再認識するしかなかったそうだ。だが、比べるものが漱石とあっては再認識も笑いながらであったという。

 次に病院での喫煙の場面である。ロンコーニの「黙認」に喫煙を楽しむ場面があるとか。その例を踏襲するのは日本人の名誉にかかわる。だからと言ってあきらめるのは癪に障ると思って一日一本だけ、と塩野は息子を説得。その時間になると塩野は浴室に閉じこもって日本の煙草である「峰」を吸った。人が来ても入浴中、とごまかしたそうだ。 

 リハビリを経て松葉づえなしで歩けるようになった塩野は最後にこう書いている。「入院中の夢は自宅にもどることであり、退院後の夢は、日本に帰ることである。だがそれがいつ実現するかまではわからない。リハビリはいつかは終わるが、コロナ騒ぎがいつ落ち着くのか、またそれに対する日本政府の方針がどうなるのかは、私の努力には関係なく決まることなのだから」。

 大腿骨骨折のニュースや記事を見ると目が釘付けになる。骨折は家の中でのことが多い。そして骨折がもとで寝たきりになることもある。骨折しないように気をつけよう。

 ともあれ今日も元気で楽しく過ごしましょう!

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