NHKプラスでETV特集「遠藤周作 封印された原稿」を見る。番組HPによると以下のようだ。
★代表作「沈黙」で知られる作家・遠藤周作。その未発表小説、104枚の原稿が長崎で発見された。なぜ、封印されたのかー原稿には、”燭影”のタイトルが消された痕跡があった。母を孤独な死に追いやった父へ、複雑な感情を抱えていた遠藤。人間の弱さとどう向き合い、ゆるすのか。小説には「沈黙」にも連なる大切なテーマが秘められていた。一人息子、遠藤龍之介の取材も手がかりに、25年の時を超えた作家のメッセージに迫る。
見つかった遠藤周作の104枚の原稿の大半は清書されていた。が、2枚だけは遠藤直筆の原稿だった。その2枚に書かれていたのは「生活」と「人生」、そして「砂浜」と「アスハルト」であり、このキーワードに何かが込められているそうだ。この4文字は遠藤の父、母の生き方かもしれない。父は東大を出た実直な人で母は和服で演奏するバイオリニストだった。だが、生き方をめぐって夫婦間のいさかいが絶えず離婚する。遠藤は父と共に生活し、新しい母が来る。実母は孤独のうちに自らの命を絶つ。
大きくなって父が義母と街中を歩く姿を見た遠藤は見て見ぬふりをする。ところが年老いた父が老人ホームに入り先が長くないと知ると初めて父を赦す気持ちになる。
遠藤の父は「アスハルト」で母は「砂浜」を歩いたような生き方だった。また、その生き方にも「生活」と「人生」があるとか。遠藤の父は「生活」の生き方であり母のそれは常に高みを目指す「人生」だったのかもしれない。
「アスハルト」は平らな道でまっすぐに楽に歩ける。が、足跡はつかない。一方の「砂浜」は足が砂に埋まり簡単には歩けない。が、足跡が砂浜に残る。「生活」と「人生」は前者が「アスハルト」の生き方であり、後者が「砂浜」の生き方に思えた。就職を控えた若い学生は見つかった小説『影に対して』を読んでアスハルトの生き方が楽そうと話す。
自分自身を顧みて、もはや今となっては生活も生き方もアスハルトも砂浜もあまり関係ないような気もする。が、それでもどちらか一方に偏らず適当にいいところを見つけて、これからの人生を元気で楽しく歩めたらそれで十分満足する気がする。というか、あえて自分のこれまでを振り返ると50代半ばまで会社につとめたのが「生活」。会社を辞めて次のステップである社会人大学生として学んだ6年間とそれ以降が「人生」になるかもしれない。
遠藤作品は若い頃、エッセイ類は読んでも小説はほとんど読んだことがなかった。というか小説は遠藤に限らずどの作家も読まずにいた。小説を本格的に読み始めたのは大連に出かけて以降、司馬作品にハマってからであり、もうすぐ3年になる。ところが、今回、遠藤のドキュメンタリーを見て『影に対して』を読もう、と思った。
遠藤周作は狐狸庵先生といわれたように作家となって世に知れ渡ってからは舞台に立ったりテレビに出たりと人気者だった。遠藤は小説を書くことが「生活」でユーモアあふれる生き方が「人生」だったのかもしれない、とこの番組を見て感じた。
ともあれ今日も元気で楽しく過ごしましょう!
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