700頁近くもある文庫本『燃えよ剣』(司馬遼太郎 文藝春秋、2020年新装版)を必死で読んでいる。次に予約の人がいるからだ。返却日までを日割りで計算すると1日に70頁読むノルマが課せられる。文庫と言ってもいわゆる文庫の大きさでなく単行本との中間くらいの本だ。その始めの方に「疫病神」と題して著者は次のように書いている。
★筆者は運命論者ではないが、人間の歴史というのは、じつに精妙な伏線でできあがっている。近藤勇も土方歳三も、歴史の子だ。しかも幕末史に異常な機能をはたすにいたったことについては、妙な伏線がある。麻疹(はしか)と虎列刺(コレラ)である。この二つの流行病がかれらを走らしめて京都で新選組を結成させるにいたった数奇(さっき)は、かれら自身も気づいていまい。この年、文久二年(注:1862年)。……このころ、大西洋上のフェレール群島(デンマーク領)で猛烈なハシカが流行し、たちまち全ヨーロッパに蔓延したから、この船員が長崎で飛散させた病原体(ビールス)は、おそらくそういう経路をたどったものだろう。……ハシカの病原体は、現代(こんにち)でこそ国内に常在し、風土病化しているが、鎖国時代の日本ではまれにシナ経由で襲ってくる程度のもので、免疫になっている者はすくない。ために死ぬものが多かった。この伝通院の二人の僧がもって帰った「異国渡来」の麻疹は、またたくまに小石川一円の老若男女を倒し、江戸中に蔓延しはじめた。これにコレラの流行が加わった。――これも、幕府が、京の勅許を待たずにみだりに洋夷(ようい)に港を開いたからだ、と攘夷論者たちはこの病原体におびえ、そういう説をなした。……「伝通院の坊主め」近藤は吐きすてるようにいった。……恨むとすれば、一昨年の三月、桜田門外で殺された大老井伊掃部頭直弼(かもんのかみなおすけ)の開国政策をうらむべきであった。(104-106p)
今、世界中を襲っている新型コロナウイルス。160年近く前にできた新選組が当時の日本を襲った麻疹とコレラに一因していたとは驚き。今から100余年前にはスペイン風邪が流行った。これもウイルスにより全世界に死者が出た。その人数は第一次世界大戦の死者数を上回っている。本を読んで改めてこういうことを知ると新型コロナウイスはこれから先どうなっていくのだろう。と思いめぐらす。
ともあれ今日も元気で楽しく過ごしましょう!
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