経済大学の最終回の特別講義を聞きに行く。今日の講演者は神戸女学院大学名誉教授でフランス現代思想家、エッセイストの内田樹(たつる)氏。この人の話を聞きたくて大学の特別講義を申し込んだ。どうしても聞きたかった。
今日のテーマは「生きる知恵と力を高めるために」。
まず、今、日本がおかれている状況から話を進める。先の新聞報道などで「東大の秋季入学」を例に挙げ、これこそが「まったなしの危機論」であるという。
この危機論。内田氏は元阪大総長の鷲田清一氏と話した際、「危機論」と言う言葉の開始を知らされる。危機論は1910年代クライシス(crisis)という哲学的概念として登場した。デカルトの時代から1914年までヨーロッパにおいて貨幣価値の変化がなく1割の高利貸しなどはイノベーション(革新)の担い手だった。それも20世紀になると哲学者などの知識人はon the edge(崖っぷちの危機論)を実感する。
それから今日まで100年間、危機論は唱えられている。そんな中での東大の秋季入学は世界標準についていかなければならない、模倣しなければならない、皆がやっているから追いつかないと恥ずかしい、という発想は疑問だと氏はいう。
イノベーターは自らがフィールドを選んで自らがゲームを始める人間のこと。先行事例を探してそれをまねるのは一番の間違いである、と。東大はそうだ、と。即ち「追いつけ、追い越せはもうやめようよ」と提案する。
過去の成功体験を信じてはいけない。日本人の場合、危機論の成功体験はないと言い切る。日本の統治システムは危機に瀕していないという。たとえ危機に瀕していても新たなルールを提案して作ればいい。行過ぎたグローバリゼーション(過剰なハイパーグローバリゼーション)からハイパ-ローカライゼーションに入ろうとしているという。
ではどうすればよいか。氏はEU、アメリカ、中国を事例に挙げてさらに話を進める。
EUは1930年から統合理念があった。だが行き過ぎたグローバル化によりスイスのみが成功し、巨大な共同体を維持できず解体しようとしている。
アメリカはTPPや沖縄などオバマ大統領により成功すれば、日本はオバマに差し出す供物になる。オバマの再選しかない。今ここでアメリカに手放されたらそのときこそが危機である。これまで日本はアメリカをフォローする人が総理などで偉くなっていった。だがこの人たちは思考停止の人。バスに乗り遅れるな!という。バスは自ら運転せよと。
中国14億の民。これは19世紀末の世界の総人口に値する。だが、これからの中国も14億を統治する成功事例が出来るとは限らない。
このようにEU、アメリカ、中国と考えてゆくと日本が危機的状況にあるとは思えないと内田氏はいう。
日本人の欠点として誰もやってないことをやり始めることの発想がない。だが、日本は水、森林もあり米だって需給可能。観光立国、医療立国、教育立国だ、と。
以上の結論として氏は、日本は危機的状況にあるのではなく、人の作った成功事例を探さず、自分で作って日本が世界標準の発信地になるように、と述べる。
先ほど内田氏のHPを見ると今日話されたことと近いことを投稿している。後でゆっくり読もう!
メディアに登場する話は3.11後、先行きがよくないことばかり。そういう話題から目を逸らしたくなる。今日の内田氏の話は元大学の先生らしく話され、聞いていて元気が出る。こういう人がどんどんマスコミにも登場し、明るい話を伝えて欲しい。今日の講演を聞いてそう思う。
講義を聞き終えると図書館へ行く。今日の講演者の内田は『日本辺境論』を書いている。この本はずいぶん前に図書館で借りて読んだ。その頃、氏の名前を知る。これからは氏のHPからブログを読むつもり。HPタイトルは「内田樹の研究室」、サブタイトルは「みんなまとめて、面倒みよう」。なんとかっこいいネーミング!大学の元教師だからか、ページビューはなんと23,000,000人。この数字を見るとすごい数の人が毎日閲覧していることになる。今日から私も閲覧しよう!
図書館を出ると、最寄の駅まで歩く。家に帰ると早速、氏の最新刊『呪いの時代』を図書館に予約。読むのはだいぶ先になりそう…。
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