1月20日から読み始めた中村真一郎の『冬』をやっと読み終えた。単行本の分厚い本で読みづらさは半端でない。が、1か月余りかけて昨夜、読み終えた。1984年発行なので今から36年前の本だ。その頃は出版社のPR誌を2冊取っていた。新潮社の『波』と岩波の『図書』である。中村真一郎のこの本はおそらく『波』を読んで知ったに違いない。加賀乙彦は『冬』について<老年と雪と氷の世界『冬』>と題して解説している。そういう点ではまさに、今の歳のこの時季に、読むにふさわしい本になったかもしれない。
加賀は次のように書いている。
★文章に力がある。息の長い、嫋嫋(じょうじょう)とあとを引く文体は、対象をやわらかく包み、しかも正鵠(せいこく)を射ている。それは作者の批評眼が物事をたしかに見詰め、それを的確な抽象語で置きかえて論じていくからで、多用された抽象語は、よく未熟な批評家がやるような抽象語の遊び、物事よりとびはなれた抽象語の放恣なひとり歩きに終わっていないからである。とくにこの『冬』のように、生涯の総決算としてそれまで読み溜めた文学作品が曼荼羅をつくっていく作品の場合、作者の批評眼と文章化の才能が生きてくるのだ。
★――『冬』では、一九八〇年代半ばの暮れから正月にかけてが小説の現在であって、この短時間性は小説を濃密にし、ほとんど日常的な時間のなかで回想がおこなわれることを可能にしている。
「回想」と記されているように本の半分くらいは()でくくられた文である。読み始めはなんと()が多い、と思って読んでいたがそれは作者の「回想」と知って意味が分かってきた。
本の気になる箇所は後日に……。
ともあれ今日も元気で楽しく過ごしましょう!
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