2020年7月31日金曜日

『逆境を生きる』

 買い替えたパソコンが落ち着いたと思ったら、今度はブログに変化があった。表面上は何ら変わらないようだが、ブログの編集面で変化している。以前のままで使用できると画面上にテロップが出ていた。ところが昨日から急に新たなやり方になった。ナニゴトも時代についていくのは大変。古いやり方も8月下旬までの区切りがあるため今日から新たな方法でブログをアップ。なんとかOKのようだ。
 
 コロナ禍で誰もがみな順風満帆の日々でなく逆境に立たされている。そんな矢先に図書館内の書架にあった『逆境を生きる』(城山三郎 新潮社、2010年)を読んだ。コロナ禍とは全く関係ない本だが、暇つぶしも兼ねて読む。以下は気になる箇所の抜粋。

 ともあれ今日も元気で楽しく過ごしましょう!

★(渋沢栄一が)やっていることは、人の話を心をこめて聞き、吸収し、建白書をひたすら書いた。野良犬同然の若い頃と同じことを繰り返していったにすぎない。いかなる逆境においても失われぬ初心、変わることのない性格が、彼を日本最大の経済人にしていったのです。これは決して運がよかったという言葉では片付かないのではないでしょうか。38p

★私が文壇に出たのは新人賞を貰ってからです。名古屋千種区城山の小さな借家に三月に越したから城山三郎というペンネームにしました。79p

★(昭和天皇)「御所には桜と橘があるのだから、今度は橘の白い花をデザインしたらどうか」。それでできたのが今も残る、橘の花の文化勲章のデザインです。暗い時代に、天皇と広田(弘毅)さんとの苦心が実ったのが、あの全く階級のない勲章――文化勲章というのは一等、二等といった等級がない―ーなのです。(「少しだけ無理をしてみる」95p)

★広田(弘毅)さんが自分にたえず言い聞かせているのは、「自ら計らわず」という言葉です。つまり、自分の利益になるようなことを求めない。人のために尽くしますが、自らのために計らわない、というのが広田さんの一生の信条でした。ですから、外務省に入っても、一生懸命仕事はするけれど、上役にゴマをすったり、猟官のための運動などは一切しない。(「自ら計らわず」105p)

★人間の魅力というものは、畢竟、その人の〈強さ〉のことかもしれません。……平和な今の時代に、はたして〈強さ〉なんて必要だろうか、と考えることもあります。けれども、やっぱり、人生というのは、晴れた日だけが続くわけではない。雨の日、嵐の日は必ず来る。そんな悪天候の日に備えて、〈強く生きる〉とは何かを考えておく必要があると、私自身の脆さを振り返って思うのです。ですから、強い生き方をした人たちから、学ぶべきことは学んでおきたい。いや、力及ばず、学ぶことも真似することもできなくても、そんな魅力的な人たちが存在すると知るだけでも、私たちの人生は豊かになるのではないでしょうか。(「強く生きる」137p)

★日米ビジネスマンたち及び家族の精神的破滅を見てきた石塚(幸雄)医師が、悲劇を起こさないようにするためには、三つの柱が必要だというのです。すなわち〈セルフself〉とインティマシーintimacy〉と<アチーブメントachievement〉という三つの柱が人間には必要なんだ、と。
 セルフというのは、〈自分だけの世界〉ということです。本を読むことも、音楽を聴くことも、絵を見たり描いたりすること、あるいは書を見たり書いたりすること、座禅することなんかもそうですね。そういう個人だけで完結する世界、思索でも信仰でも趣味でもいい、個だけの世界の重要性。
 インティマシ―というのは、親近性という意味ですね。……それからアチーブメント。つまり、達成ってことです。……この三つが人間を支える大きな柱だと石塚さんは言っていました。(「人間を支える三本の柱」162-163p)

★こんな言葉もある。〈硯田悪戯無く、酒国長寿有り〉。硯田、硯の田というのは、読書の世界とか、物を書いたりする世界、知的な活動の世界のことです。本を読み、物を考え、物を書く、そういうことさえしていれば、人生に悪い年というのはない。つまり、本さえあれば、人間は幸せ、と。そして後半は解説不要ですね、酒の国には長寿がある。(「人間を支える三本の柱」165p)

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