2022年12月6日火曜日

『街道をゆく』(三十四)「中津・宇佐のみち」

 先日、土佐に出かけた。土佐は高知県で四国には他にも阿波、讃岐、伊予がある。讃岐の香川県と伊予の愛媛県はなじみがあるが土佐、阿波は遠い気がしていた。ところが土佐に出かけてみると思ったよりも遠くなく、もう一度行きたくなるほどいいところだ。阿波の名所旧跡は今一歩わかっていないが、出かければきっといいところに違いない。『街道をゆく』に阿波が取り上げられているかどうかを調べると「阿波紀行」があった。今は「近江散歩」と「奈良散歩」を読んでいるのでこれを読み終えたならば「阿波紀行」を読もう。

 遊んでばかりいたらすっかり本を読む速度が衰えている。再度気合を入れなおして本を読もう。以下は『街道をゆく』(三十四)「中津・宇佐のみち」 (司馬遼太郎 文藝春秋、一九九七年第三刷)から気になる箇所をメモした。

 ともあれ今日も元気で楽しく過ごしましょう!

★目の前に、睡蓮の葉のむれの面がひろがっている。この堤に立てば、容易に古代のなかに入ることができる。睡蓮などと漢名でいったり、印象派のクロード・モネの水面にきらめくこの水草をおもうより、和名のヒツジグサこそふさわしいかもしれない。この花は夜、ねむるように閉じ、未の刻(午後二時)にひらく(ただし実際には午前中にもひらくらしい)。蓮の群落もある。また蓴菜(じゅんさい)の大群落もみられる。……この水草もスイレン科らしい。他に、夏になるとあざやかな黄の花を咲かせる香骨の群落があり、これもスイレン科だそうだから、この池(注・みすみ池)は、睡蓮がいとこ・はとこを従えて大いににぎわっているようである。(216-217p)

★春宮社(とうぐうしゃ)という摂社のそばから林のなかに入った。林のなかは、印象派絵画の世界だった。あの頃の画家たちは、光を印象づけるために影を淡く紫でえがいたのだが、この細長い林のなかは、それを証明するように落葉の一枚ずつが無数の紫の影をつくっていて、上から木漏れ日のなかで輝いたり、ゆらめいたりしている。……頂上は、朱と黄であふれていた。屋根は黒っぽい茶の檜皮でふかれている。建物のほうは朱塗で、黄金の金具が打たれ、樋までが、黄金であることに驚かされる。「宇佐の黄金樋(きんとい)」というのは、神社建築のなかでも、聞こえたものであるらしい。(253p)

★本宮を辞し、こんどは若宮坂の石段をくだることにした。坂は、イチイガシやクスの原生林のなかにあって、じつに気分がいい。林の標柱をみると、この神宮ではこの森のことを、「社叢(しゃそう)」とよび、国指定の天然記念物の標柱をたてている。……宇佐神宮の最大の年中行事は「放生会(ほうじょうえ)」である。仏教的な名がついている。捉えた生きものを放してやる行事である。(58p) 

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