世間では「断捨離」がもてはやされている。が、それに異を唱える本が出た。それは『捨てない生き方』 (五木寛之 マガジンハウス、2022年第2刷)である。手もとにある『街道をゆく』を読み終えた。そのとき図書館に予約していたこの本を確保する。借りて一気に読んだ。
捨てないものとして五木は数点、写真を掲載している。そのなかに血液型を調べたときもらった証明書がある。自分自身、両親がB型なので間違いなくそのはずだ。それなのに一度調べたことがある。もちろん捨てずにとっている。五木もB型だ。
何が何でも断捨離に賛成していない。が、だからと言って何でもしまい込む方ではない。なるべく少ないもので生活できれば一番いいのだがあまりにもモノがない生活はすべての欲望を否定するようで楽しみがなくなりそうだ。モノには程度がある。自分に合ったやり方で捨てる捨てない生活ができればいいと思ったりする。
ともあれ今日も元気で楽しく過ごしましょう!
以下は本から気になる箇所の抜粋。
★依代(よりしろ)とはミディアムのことです。あの世のお告げを人々に伝える恐山のイタコのような存在。神さまと自分を結ぶ。あの世とこの世に橋をかける。そういった場合には、それを伝えてくれる(何か)が必要なんですね。モノは依代となって、記憶や思い出を私たちに伝えます。モノを通じて、噴水がさあっと吹き上がるように記憶や思い出が蘇ってきます。……見えない明日に向かって生きていくうえで、自分を後ろから支え、そして背中を押してくれる力を得る。過去の記憶を噛みしめるとは、そういうことなのだとぼくは思います。……そういう意味で、今まで生きてきた過去の記憶は大変大きな力を持っています。昨日が見えない者には明日も見えないのです。(66-68p)
★簡単にモノを捨て去ってしまうということは、モノにまつわる人それぞれの記憶と合せて、もっと大きな、モノを依代にして甦る私たち全体の時代の記憶、(歴史)というものを簡単に捨て去ってしまうということ。記憶とは、結局、歴史なのです。(164p)
★モノをどんどん捨てていくということは、自分が生きてきた人生、そして、自分が過ごしてきた時代という(歴史)を捨てていくのと同じことのように思います……捨てられないのは、もちろん執着する心があるからでしょう。執着はよくないという話も聞きますが、モノに執着し、ヒトに執着し、イノチに執着するのが人間というものです。(195p)
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