2021年4月21日水曜日

『コラムニストになりたかった』

 『コラムニストになりたかった』(中野翠 新潮社、2020年)を読んだ。以前にも著者の本を読んだことがある。本を読むまでは名前から勝手に年老いた男性を想像していた。ところが本を読んでいて同時代を生きている女性と知る。2冊目となるこの本は1969年から2010年代までを書いている。1969年は著者が大学を卒業した年。同時代を生きる者にとって関心をもってこの本を読んだ。著者は年代ごとの資料を保管しているらしくその年に起きた出来事などを書いている。読むにつれて、特に若いころのことについて地方に住んでいる者にとっては都会に暮らす人との生活の違いを見せつけられる。

 とくに都会での大学生活後の話ではその思いが強い。著者と比べて大学、といっても自分の場合は短大だが……。高校時代、大学生活に強い憧れがあった。受験に失敗して希望しない短大に入った。その後、若さを十分生かせないままに30代を迎える。不運を嘆く前にやることがあるはずと思いながら過ごした日々。それから時が経って俄然やる気を出しはじめた30代半ば。それ以降は人生が楽しくなってゆく。そして今に至る。コロナ禍にあっても自分の中では今が一番楽しい!どうあっても若いころには戻りたくない!

 著者は大学卒業後、就職が決まらず、親が務めていた新聞社にアルバイトで入る。そこから仕事を通じていろいろな人たちと知り合いコラムニストになってゆく。読んでいて羨ましかったのは20代で当時はソ連の時代、アエロフロートに乗ってドイツを2か月も旅行していることだ。それも1人でフリーでの旅行だ。初めのうちは途中まで一緒に行動した連れもいたそうだが、それもツアーでなくフリーが羨ましい。

 今の著者は妹夫妻と3人での旅行が多いようだ。同世代を結婚せずに生きている女性。これだけでも親近感がわく。以下は、気になる箇所から抜粋した。

 ともあれ今日も元気で楽しく過ごしましょう!

★考えてみれば「恋愛→結婚→出産→家庭」というのは人間社会において根源的な重要事項であり、人間ドラマのみなもとでもあるようなものなのだ。それに関心が薄い私って、いったい何なんだろう。ただ、ハッキリとわかったことは、私は私自身のことについて書くのは苦手だけれど、観た映画や読んだ本、耳にした巷の話などについて書くことには喜びを感じる。おのずから批評性を帯びた文章になるわけだが……専門的知識は乏しいので、気楽で、読みやすさを優先した文章のほうがいい。読者は女の人に限定せず、男の人にも読んでもらえるような文章……というようなことを考えるようになっていた。(101p) 

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