2014年12月6日土曜日

『人生を正しく享受するために』

『人生を正しく享受するために』(海老坂武 朝日新聞出版、2014年)、サブタイトルは「新<人生論>ノート」を読んだ。

裏表紙には「選択、孤独、好奇心、恋愛、嫉妬―改めて向き合うと、自分の心の奥底、他者は社会との関係が見えてくる。文学や哲学に精通するサルトル研究の碩学が、豊富な経験と幅広い分野の名作の断章から、人生を紐解く。」とある。

著者の著書に『シングル・ライフ』がある。ずいぶん前にこれを読んで著者を知った。いまでもシングル・ライフらしい。同類項としての関心がこの著者に向くのだろうか。

本の冒頭にこう書いてある。「何かを選ぶということは、他のものを選ばぬというとうぜんのこと、他のものを捨てるということだ。一人の男(女)を選ぶということは、他の男(女)を捨てるということだ。捨てないまでも、視野の遠くに置くということだ。子どもを産むとは、女にとっても男にとっても子どもと共に生きる人生を選ぶということで、子どものいない人生を捨てるということだ。この逆も同様である。」7p

これを読んで当然のことなのに妙に納得してしまった。以下はまたいつものように気になる個所をメモしたもの。

※認知症とは選択の可能性が限りなくゼロに近づいた状態である。14p

※歳を重ねると、プラスマイナスが拮抗してくる。老いとは、この生産の量が磨滅の量を下回ったときに始まるのだ。しかも悪いことに、老いにおいては、誰もが知るとおり、新たな記憶ほど早く擦り減っていく。したがって、老人は残り少ない記憶―過去の記憶にしがみつく。過去の記憶を<錦の御旗>(なんと老人的な表現!)のように振りかざして生きていく。20P

※人は未来がないとき孤独だ。36p

※自分の人生を過去形でしか語れぬ時、人は孤独だ。37p

※いつから誰が、<孤死>などということをことさらに言い出したのか。この<孤>は一人という意味なのか。あるいは孤独という意味なのか。いずれにせよ死は一人の行為であり、孤独な営みなのだ。どんなに多くの人間に囲まれていてもそれは同じことだ。45p

※芸術作品とは精神の外在化、あるいは形象化である。肉体化といっても間違いないであろう。思想を精神とすれば、言語は肉体である。あるいは作品という肉体を作り出す素材である。同じことは画家の素材についても彫刻家の素材についても言える。79p

※建築であれ、彫刻であれ、絵画であれ、音楽であれ、焼き物であれ、芸術の創造と享受の原初に、形や色彩や音への好奇心がないはずはない。芸術家とは、芸術の愛好家とは、好奇心の鬼である。いずれにせよ、好奇心は文化と呼ばれるものの根源に位置する。82p

※好奇心が、人間への関心を失い、物にだけ、機械にだけ、数字にだけ向けられるとしたら、それは不幸な時代だということだ。91p

※笑いの波長の違う相手と友人として付き合うのは難しい。179p

※希望は幸福の主たる内実であり、幸福の条件ですらある。187p

※希望とは未来だ、常に未来に向かう。幸福とは現在か、さもなければ未来の約束だ。…希望とは作るものだ。そこに存在するものではない。幸福はその希望を作れるかどうかにかかっている。188p

※歳をとってからの幸福の源泉として注目されるのが趣味である。旅、山登り、釣り、ダンス、読書観劇、語学、歴史の勉強。周囲を見渡すと、多くの友人がこうした趣味になだれ込んでいく。仕事人間からスムーズに趣味人間へ、幸福探求のひとつのパターンだ。仕事は止めた、しかし人間関係派としてがんばるのは疲れるし、またその能力にも欠ける、かといって自然派に徹するだけの金もなく、勇気もなく、そもそもその素養もない、というときに趣味の声が呼びかけてくる。200p

※いまの私には幸福という言葉がときどき訪れてくる。日々の小さなことに、折々の幸福を感じる。幸福は現在時に宿っている。朝起きたときに窓から太陽が差し込んでいるとき。芦屋の運河沿いにあるカフェテラスでそよ風に吹かれながら原稿を書いているとき。親しい女友達と時間を過ごしているとき。旅の予定をあれこれ立てているとき。幸福という言葉との関係も年齢によって姿を変えるようだ。206p

※旅の時間は非日常の時間だ。その中で好奇心の刃を研ぎ直す、感受性の洗濯をする、驚きと発見、これが旅だ。好奇心が衰え、感受性が鈍化し、想像力が発動されないなら生の更新はできない。旅が旅でなくなる。旅をするとはまた、肉体を動かすことだ。肉体がいうことを聞かなくなったら旅は諦めなくてはならない。旅には始まりがあり、終わりがある。いつかは終えねばならない。216p

※旅は終わるまでは途上にある。224p(ヘルマン・ヘッセ「旅の秘密」『ヘッセ詩集』)

※人生を愛すること、自然の欲求を否定しないこと、これが老いをよりよく生きる秘訣であり、よりよく死ぬことの秘訣となる。238p

※モンテーニュに帰ること。『エセー』の最期にある「自分の存在を正しく享受すること」というあの言葉に帰ること。長い未来が持てなければ短い未来を大事にすること。いま、私にとって、「自分の存在を正しく享受する」最良の仕方は、旅をすること、書くことであるように思われる。…「年とともに趣味を変え、年相応の快楽だけをもとめよう」というルソーの言葉(『エミール』樋口謹一訳、白水社)が思い出される。243p

今日は忙しい一日になりそう。久々の日本画教室の後は早めのクリスマス会。誘われて初めて参加する。

湯沸しのティファール。昨日も「火事です、火事です」を連発する。その後に「パチン!」と何かに打たれた音がする。お湯を沸かそうとするとスイッチが入らない。これが壊れたらしい。すぐに近くの電気屋に駆け込む。新たなティファールを購入。色は真っ赤。大きさも800㎖がMaxの容量。わが家にちょうどいい!

今日から再来週まで忙しくなる。元気で頑張ろう!今日も楽しく!

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