「過酷な奈良の旅その2」からつづく。
奈良の宿である美榛(みはる)苑は早くから予約した。寂れた場所にあるホテルなので1泊2食付きの予約は正解だった。また食事も美味しくてよかったのだが、部屋が和室でベッドがツインだった。ただ部屋の中に椅子が一つもなく、(どこに座れば?)と思いを巡らす。いいアイデアが浮かんだ。部屋のゴミ入れの上に座布団を置いてスツールのようにして座った。泊まったホテルは天然温泉たまご肌美人の湯がうたい文句だが、部屋に椅子は欲しかった。
室生寺
宿から榛原駅までは1時間ごとに無料送迎バスが出ている。一番早いバス時刻は10時と遅い出発なので朝食も遅くした。ところが目覚めはいつもよりも早すぎた。というのも朝日が部屋に差し込んで明るく目が覚めた。朝食は8時過ぎに予約したので部屋でゆっくりする。前日の長谷寺がきつかったのでゆっくり朝を過ごせたのはよかった。
10時、送迎バスに乗る。前日は1人だけの乗客だったが、この日は数名が乗車。10分足らずで榛原(はいばら)駅に到着。榛原駅から隣駅の室生口大野駅までは近鉄に乗車。しかし、ここから室生寺に行くにはさらにバスに乗る。このバス便が1時間に1本しかない。ガイド本によると室生口大野駅近くに大野寺があり、摩崖仏もあるとのこと。室生寺行きのバスの便まで50分ある。室生口大野駅を下車後、運よく観光案内所が開いていた。摩崖仏の行き方を尋ねると不愛想な係が、声を出さずに身振り手振りで椅子に座れと言う。そして暑いから気を利かせてくれたのか小さい団扇を投げてくる。
摩崖仏の場所を教えてくれるが「目が悪くて見えない」、と話すと立ち上がって自販機を指さし、その横の道を歩けば数分で摩崖仏が見える場所に着くという。そしてバス停は摩崖仏のところにもある、と教えてくれた。ぶっきらぼうな係と思ったが優しい人だった。
歩いて5分のところにある大野摩崖仏を目指して歩く。途中、日陰で休んでいる人に場所を聞くとまっすぐ行けばいい、と教えてもらう。また、摩崖仏のそばを流れる川の水が綺麗ともいう。言われた通り歩くとすぐに着いた。が、摩崖仏はガイド本によると午後の方がはっきりと見えるとか。摩崖仏などを見学後、バスが来るまで30分ある。川辺まで行くが日差しは強いが水はきれいだ。澄み切った川は宇陀川という。宇陀の字は違うが自分の姓と読みが同じなのでこの川に愛着がわく。
室生寺の末寺である大野寺。春にはしだれ桜の名所として知られている。が、暑い時季は桜も咲いていないので境内に入らず外から参拝した。それにしてもバス停に椅子はあるが日影がなく、暑い中、立ってのバス待ちは結構大変。
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摩崖仏近くの大野寺バス停 後ろの建物は公共トイレ |
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室生寺太鼓橋 |
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女人高野室生寺と石碑の彫られた表門 |
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室生寺境内 |
室生寺の境内に入ると宝物殿がある。室生寺の国宝などは宝物殿にある。入山券と宝物殿のチケットがセットになっており、まずは宝物殿を見学。ここには釈迦如来坐像、十一面観音菩薩立像、地蔵菩薩立像、十二神将立像などが収めてある。写真撮影は不可なのでチケットの写真を載せよう。宝物殿は新たな建物でエアコンが利いて涼しかった。
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宝物殿のチケットから十一面観音菩薩立像 |
宝物殿内の仏像を見学後、仁王門を通って入山券に記載の地図を見ながら歩を進める。本来ならば奥の院まで行きたかった。が、前日の熱中症に懲りたので無理をせず五重塔まで行く。室生寺の五重塔は日本一小さい美しい五重塔として知られている。高さは16m。遠くから写真に写すと本当に小さい。近くから見ると美しさが際立つ。
室生寺はシダなどが茂る樹林で木陰の中を歩く。その点では室生寺は長谷寺よりも幾分暑さが和らぐ。帰り道で若い女性とすれ違う。「奥の院へ行った?]、と尋ねると「登った」という。しばしの立ち話で「前日の暑さに負けた」と話すと塩分の入ったタブレットを2個くれた。
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仁王門 |
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仁王像(右) |
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仁王像(左) |
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鎧坂 |
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弥勒堂 |
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室生寺名物の五重塔 |
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近くからの五重塔 |
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国宝 金堂 |
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バン字池 |
奥の院まで行くのは断念してお昼を食ばべに行く。太鼓橋のそばに橋本屋というお店がある。このお店に入るとソバがないという。何も注文しないうちからそう言われたので「他には?」と聞いた。しばらくするとOKとのことでとろろうどんをいただく。太鼓橋を見ながらいただくとろろうどんは熱いが美味だった。ここで一休み後、室生口大野行きのバス停を目指す。暑さと前日からの歩きすぎでとにかく座りたい。幸い待合室に椅子があった。バスが来るまで40分くらいある。が、どこにも行かず椅子に座る。しばらくすると人がやってきた。同じくバスに乗る人だ。話をすると日帰りで東京から来たという。そしてこれから桜井市にある文殊院へ行くともいう。
さらに話していると長谷寺の話になった。長谷寺のご本尊である「十一面観世音菩薩像を見た?」、と問われる。「見ていない」、というと「長谷寺に来たならば是非とも見るべき菩薩だ」、とも言われはる。本堂に参ったがそんなものは見ていない。後で調べるとこのご本尊はいつも公開されているのではなく特別公開日だけの公開だった。
室生口大野行きのバス待合室で知り合った人と室生口大野駅までバスに乗る。駅到着後、近鉄桜井駅まで乗り、ここで別れる。その人は文殊院に行くと言っていたがここへもいつか出かけよう。近鉄でそのまま鶴橋まで乗る予定だった。ところが何を勘違いしたのか、大和八木駅で乗り換えようとした。下車後に(乗り換えなくてもよかったのに)、と気づく。次の急行が来るまでしばしホームで待つ。このあたりの駅からホームは人で込み合う。20分待って次の近鉄に乗る。ホームで待つ間も暑くて狂いそうだった。
鶴橋に到着後は大阪駅で乗り換えて新大阪駅までJRに乗る。予定していた時刻よりも1時間早めに新大阪駅に着いた。新幹線チケットのおとなびは変更できない。仕方なくここで涼をとりながら珈琲を飲んで一休み、と思った。それは大間違いで新大阪駅は人であふれかえって休めそうなところがない。仕方なく、どこかに座りたい一心で新幹線ホームの椅子に座って帰りの新幹線が到着するまで待つ。が、半端なく暑い。自販機のジュースを手にしてしばし待つ。帰りののぞみ43号博多行きが来た。今回の新幹線は行きも帰りも隣に人がいた。
狂うほどの暑さの中、それでも何とか2日間の旅を無事終えた。終えたはいいがこれからは暑い時季の旅はやめよう。生きてきた中で一番過酷な暑さだった。ここまで元気で生きてきた。これからもずっと元気でいるためにも無理は禁物。肝に銘じて。
それにしても一人旅で出会った3人は自分も入れて全員が団塊の世代だ。これにはびっくり。団塊の世代はどの人も一人で旅をする!?なお2日目の万歩計は8825歩。
ともあれ今日も元気で楽しく過ごしましょう!
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室生大の行きのバス待合室 |
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