『北斗の人』(下)(司馬遼太郎 講談社、2006年第1刷)を読んだ。以下はこの本を読んで気になる箇所をメモした。
今日も暑く成りそうだ!
ともあれ今日も元気で楽しく過ごしましょう!
★人の世の事はたいてい左右いずれとも決めがたいことが多い。そのとき当人にかわって、覚悟の決定(けつじょう)をうながしてくれる存在のあるなしで、人の幸不幸のわかれることが多い。……周作は、馬庭方に積極的な挑戦をしてみる気になった。が、あくまでも慎重なこの男のことだ。自分自身がいの一番に出かけてゆくようなことはしない。門人をやる、と決めた。その門人も、高弟はやらない。わざと、もっとも弱い群れのなかから五人をえらんだ。(156p)
★「わが千葉家の守護神だ」と、周作はひくい声でいった。相手が神仏だからどうということはないが、人間ならばこれほどの奇遇はないであろう。北斗七星(北辰)つまり妙見菩薩という古代中国の月星信仰からうまれたこの外来神を、千葉姓のものはことごとく信じている。現に周作の生家には屋敷神として妙見宮がまつられていたし、周作の紋所は月星紋であり、周作がつけた自分の兵法の名称は北辰一刀流である。……承平年間、平将門が関東で乱をおこしたとき、伯父の国香と戦った。平良文も国香に属して戦い、この付近が戦場になった。その時、国香、良文が奇勝を得たが、奇勝はこの地に鎮座する妙見菩薩のお陰だということをかれらは信じた。この平良文が、千葉家の祖である。良文はこの引間村の妙見菩薩の分霊を得て秩父の大宮に移し、さらに根拠地の千葉に移した。という、要するに千葉家の守護霊である北斗七星(妙見)のもとが、なんとこの引間村の妙顕寺であるということを知って、周作はおどろいたのである。(217p-218p)
★その夕、周作は近所の大工に板を削らせ、「玄武館」と墨書した。古代中国人は東西南北をそれぞれ象徴する想像上の神獣をつくり出した。東は青竜、西は白虎、南は朱雀、北は玄武である。北辰の北という義を、周作は玄武であらわした。それを軒下に掛けると、なんとなく周作の胸が昂揚してきて、(おれの青雲の湧き出ずる家だ)とおもうと、この家の薄ぎたない軒柱でもなですりたい気持ちになってきた。(275p)
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